高周波誘電加熱の応用例
前述の高周波減圧乾燥では心持ちのスギ・ヒノキ柱材を乾燥するには難しく、その課題解決のために開発されたのがハイブリッド型木材乾燥です。蒸気式熱気乾燥(外部加熱)と高周波誘電加熱(内部加熱)を併用し、それぞれの利点を組み合わせた乾燥方式です。
ハイブリッド型乾燥の原理は、乾燥装置内では80~90℃程度の蒸気式熱気の外部加熱により乾燥を進めながら、高周波誘電加熱により水分の多い心材部分を選択的に100℃以上に内部加熱します。これによって、外部の熱気温度と木材内部温度に温度勾配が発生して内外面に有意な圧力差が生じ、心材部分の水分は外層に向かって積極的に押し出されます。(図7-7-1)
この結果、乾燥が迅速に進められ、材内の水分傾斜も比較的容易に解消され、均一な乾燥が実現できるようになりました。また、高周波誘電加熱は心材部分を加熱することに集中的に使われ、熱量消費の大きな蒸発潜熱は蒸気を使うことで、省エネルギー化をいっそう進めることができます。
図7-7-1/ハイブリッド型乾燥のメカニズム
ハイブリッド型木材乾燥装置
ハイブリッド型木材乾燥装置は、蒸気式熱気乾燥を効率よくおこなうため桟積みが必須で、桟積み間に高周波電極板を挟み込み、高周波誘電加熱します(図7-7-2)。装置のイニシャルコストを下げるために、高周波発振装置は必要最低限の出力とし、一度に積み込む乾燥材全体を4つのグループ(1台車2グループ、2台車/1炉体)に分け、1台の高周波発振装置でグループごとに順次、切り替え加熱する方式を採用しています(図7-7-3)。
図7-7-2/高周波電極板と桟積み
図7-7-3/グループ別切替加熱
さらに、初期重量により大まかに重量材グループ、中量材グループ、軽量材グループと重量選別をおこなってグループごとに積み込み、グループごとに推定される初期含水率と目標とする仕上含水率より計算された脱水量にあわせて高周波電力量を与えます。つまり、軽量(低含水率)グループには小さな高周波電力量を、重量(高含水率)グループにはより大きな高周波電力量をかけます。これにより、初期含水量の大きなばらつきにも関わらず、仕上含水率を揃えることが可能となり、かつエネルギーコストの削減を実現しました(図7-7-4)。
ハイブリッド型木材乾燥装置は、スギ・ヒノキの心持ち柱材であれば、従来の蒸気式熱気乾燥に比べて2分の1の乾燥日数で仕上げることができます。梁や桁材などの大断面材は、従来の蒸気式熱気乾燥では乾燥がより困難ですが、ハイブリッド型木材乾燥装置では乾燥日数の短縮、水分傾斜の解消、省エネルギー化などでさらに優位です。(図7-7-5)に、乾燥中のスギ平角材(135×200×長さ4000mm)の材内部の温度経過、乾燥装置内の乾球温度・湿球温度の経過の一例を示します。
図7-7-4/重量選別
図7-7-5/スギ平角材の温度経過
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