高周波誘電加熱の応用例
外食産業やコンビニ、スーパーで取り扱われる肉や冷凍食品は、冷凍状態で貯蔵・流通され、調理や販売の際に解凍されます。このとき、品質を損なわないようにするには、短時間で均一に解凍しなければなりません。送風や流水による外部加熱では時間がかかりすぎ、効率が悪く品質も劣化します。解凍時間を短くするために高温で外部加熱すると、食品の内部と外部の温度差が大きくなり、品質劣化はさらに大きくなります。冷凍食品の解凍は、短時間で内部から均一に加熱する誘電加熱が適しています。
また、同じ誘電加熱の中でも、次の3つの理由によって、マイクロ波加熱よりも高周波誘電加熱のほうが食品解凍にはより適しています。
周波数が低いほうが熱暴走を起こしにくい
誘電加熱の発熱量は、周波数・電界の強さ・物質の損失係数に比例します。
(表7-4-1)のとおり、水は氷よりも損失係数が大きいので発熱量が大きく、そのため氷は解凍が進み、水分が多くなるほど発熱しやすくなります。誘電加熱は物質を均一に加熱するとはいうものの、多少のムラは生じるので、解凍が進んだ部分がより強く発熱します。このように損失係数が大きい部分だけが極端に強く加熱される現象を熱暴走(ランナウェイ現象)といい、品質劣化の原因となります。
水と氷の損失係数の差異は、(表7-4-1)のとおり、周波数の高いマイクロ波のほうが顕著です。つまり、周波数の低い高周波のほうが、水と氷の損失係数の差異は比較的小さく、それだけ熱暴走を起こしにくいわけです。これが、マイクロ波よりも高周波のほうが食品解凍に適している、1つめの理由です。
表7-4-1/水と氷の損失係数
高周波(13.56MHz) | マイクロ波(915MHz) | |
---|---|---|
氷(-15℃) | 0.07 | 0.06 |
水(15℃) | 0.67 | 2.7 |
損失係数の差 | 約9倍 | 約45倍 |
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