高周波電力の加熱効率
変換効率に影響される電力と加熱時間
誘電体の外から高周波電圧を加えて誘電体を加熱するとき、加えたエネルギーがすべて熱に変わるとすると、誘電体全体の発熱量H[J]は電力P[W]×加熱時間[秒]になります。数式で表すと、誘電体全体の発熱量Hと加えた電力P、加熱時間t の関係は、H=Pt です。
しかし、誘電体から発生した熱はすべてが誘電体の温度上昇に使われるわけではなく、一部はまわりの空間に逃げてしまいます。発生した熱が誘電体の温度上昇に使われる割合をηとすると、温度上昇に使われる熱量はηHです。ηは変換効率とよばれる量で、誘電体の形や大きさ、断熱率などによって決まります。一般的には、ηは0.8 ~0.9 程度の大きさです。
比熱c[J/kg・℃]、体積Ω[m3]、密度s[kg/ m3]の誘電体を温度T1[℃]からT2[℃]に上昇させるのに必要な熱量はcsΩ(T2-T1)ですから、誘電体全体の発熱量H=Pt が変換効率ηの割合で温度上昇に使われるとすると、ηPt =csΩ(T2-T1)という関係が成り立ちます。この式を変形すると、加熱に要する時間tは、t=csΩ(T2-T1)/(ηP)。
このように、被加熱物の体積、比熱、密度、変換効率が決まっていれば、高周波電力を加えて特定の温度まで加熱するためにかかる時間が計算できます。
加熱に要する時間は、電力に反比例します。つまり、加える高周波電力が大きいほど、短時間で加熱できるということです。しかし、加える高周波電力が大きすぎると、誘電体に高すぎる電圧がかかって放電が起こり、誘電体が破壊されてしまいます。加える高周波電力は誘電破壊を起こさないように適切な大きさにする必要があります。
電源入力の消費効率は?
一方、高周波誘電加熱装置の電源入力から被加熱物に至るまでのラインでも、(図3-10-1)のようにエネルギーロスが発生します。一般的には、高周波発振器の出力は電源入力の70%。最終的に被加熱物に消費されるのはその50~80%で、結果、オーバーオールの効率は35~56%となります。このように効率は大きく異なります。
図3-10-1/高周波誘電加熱装置におけるエネルギーロス
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