高周波誘電加熱の原理
7.比誘電率と損失係数

第3章-5でみたように、誘電体損失、つまり単位体積あたりの誘電体内で熱となって消費される電力はP =ωεrC 0 V 2 tanδです。
ここで、比誘電率εrと誘電体力率tanδの積εr・tanδを損失係数と呼びます。
つまり、誘電体内で発生する熱量は、周波数(ω)、電圧の2乗(V 2)、損失係数に比例するということになります。周波数や電圧が同じなら損失係数が大きいほどよく発熱するということですから、損失係数とは、高周波誘電加熱による物質の発熱のしやすさを表した係数と考えることができます。
損失係数は、誘電体の種類や温度、周波数によって定まる値です。

主な物質の損失係数は(表3-7-1)のようになっています。

表3-7-1/さまざまな物質の周波数別の損失係数

■高周波(周波数1MHz)
物質名(例) 損失係数(εr・tanδ)
空気 0
氷(-12℃) 740×10-4
水(25℃) 3,900×10-4
木材 2,000×10-4
木材 30,000×10-4
フェノール樹脂 1,500×10-4
ユリア樹脂 2,000×10-4
ゴム 3,000×10-4
3,000×10-4
ナイロン 240×10-4
■マイクロ波(周波数2450MHz)
物質名(例) 損失係数(εr・tanδ)
空気 0
氷(-13℃) 28×10-4
水(25℃) 123,000×10-4
木材(気乾) 9,500×10-4
牛乳(4.5℃) 120,000×10-4
魚スリ身(0℃) 20,000×10-4
ガラス 500×10-4
テフロン 4×10-4
1,600×10-4
ポリエチレン 5.2×10-4