誘電加熱を起こす電磁波の種類
9.使用周波数の割当てを定めるISMバンド

誘電加熱に利用できる電磁波は、周波数が3MHzの短波から30GHzのセンチ波までの帯域ですが、その中から日本国内で実際に使用できる周波数は人為的に制限されています。電波を利用する際の混信や雑音妨害を避けるために、国際電気通信連合(ITU/International Telecommunication Union)が用途に応じた使用周波数の割当てを指定しているからです。
誘電加熱用の割当てとしてはISM(工業・科学・医療用/Industrial,Scientific and Medical Use)バンドが(表2-9-1)のとおりに指定されています。

表2-9-1/ISM バンドとその割当地域

割当周波数 割当地域 加熱名称
13.56MHz±7kHz 全地域 高周波誘電加熱
27.12MHz±163kHz 全地域
40.68MHz±20kHz 全地域
433.924MHz±870kHz オーストラリア、ポルトガル、ドイツ マイクロ波加熱
915MHz±13MHz 南北アメリカ、グリーンランド
2450MHz±50MHz 全地域(ただし、アルバニア、ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、
ルーマニア、チェコスロバキア、旧ソ連邦を除く)
5800MHz±75MHz 全地域
24125MHz±125MHz 全地域

上の表のとおり、数MHz~数十MHzの帯域では3帯域が指定されており、高周波誘電加熱用に使われています。
マイクロ波加熱用としては5帯域が指定されていて、そのうち915MHzと2450MHzが実用化されています。日本では電波法により2450MHzのみが認可されていますが、915MHzも他の通信設備などに妨害を与えないように電波遮蔽策を施して、電波法で定められた基準を守れば使用できます。実際に冷凍畜肉・魚肉の解凍、耐火物の加熱・乾燥処理など大形の被加熱物を対象に利用されています。
なお、ISMバンドには433MHz、5800MHz、24125MHzの電波も指定されていますが、これらの周波数を発振させる電子管が限られているため、実用例はほとんどありません。