高周波誘電加熱の原理
1.コンデンサに電荷が溜まる原理

高周波誘電加熱とは誘電体内部の分子が高周波電界の向きの反転に追随して激しく振動し、その摩擦によって発熱することであると概念的に説明しました。しかし、それはあくまでも概念的な説明であって、電気理論的には誘電体内に生じた一種の抵抗によって、電気エネルギーが熱エネルギーに変換され発熱するという説明になります。その説明をする前に、予備知識としてコンデンサの原理と、交流を電源とした回路にコンデンサを置いた場合の電圧と電流の時間的なずれ(位相差)について説明しましょう。
コンデンサとは(図3-1-1)のように、2 枚の電極の間に誘電体を挟んだものです。高周波誘電加熱をおこなう場合、被加熱物である誘電体を 2 枚の電極に挟みますが、コンデンサの構造はこれと同じです。
コンデンサに直流電圧をかけると、電源から電極までは電流が流れますが、誘電体は電流を通さないので、電源のプラスの側の電極にプラスの電荷が溜まり、マイナスの側の電極にマイナスの電荷が溜まります。同時に、電極に挟まれた誘電体はプラスの電極に接した側がマイナスに、マイナスの電極に接した側がプラスに分極します。分極が進んでいる間は、電極まで電流が流れて電荷は増え続けますが、分極しきった時点で電荷は飽和状態になります。この時点でそれ以上、電流は流れなくなって均衡状態となり、コンデンサに電荷が溜まります。では、コンデンサに交流電圧をかけるとどうなるでしょうか。次ページ以降で、説明いたしましょう。

図3-1-1/コンデンサの構造