誘電加熱を起こす電磁波の種類
6.周波数の推移と誘電分極の変化

前ページで、高周波電界によって生じる配向分極、イオン分極、電子分極は、それぞれ固有の周波数の帯域で、激しい振動や共振が起こることを説明しました。周波数を横軸に置き、周波数が高い方に推移するに従って、誘電分極がどのように変化するかをグラフ化したものが、(図2-6-1)です。

図2-6-1/周波数の推移と誘電分極の変化

グラフ左の周波数の低い帯域では、配向分極、イオン分極、電子分極のすべての分極が生じています。そこから少し周波数が高くなって電波の帯域にくると、電界の反転に対して配向分極の反転に遅れが出始めて、なんとか追従しようと分子が激しく振動し誘電加熱が起こります。そして、その帯域を超えると、電界の反転に配向分極の反転が完全に追従できなくなって、配向分極は見られなくなります。

この固有の周波数の帯域で起こる誘電分極の大きな変化を誘電分散といいます。また、高周波電界に追従しようとする分子の激しい振動で誘電加熱が起こるのは、高周波電界のエネルギーが吸収されて熱エネルギーに変わったと見ることができます。つまり、誘電分散が起こるとき物質はエネルギーを吸収しており、これを誘電吸収といいます。
同じように、イオン分極の誘電分散は赤外線の帯域で生じ、誘電吸収により加熱作用を生みます。そして、赤外線の帯域を超えるとイオン分極は追従できなくなます。最後に残った電子分極は誘電分散を紫外線の帯域で起こして化学作用を生みます。それ以上に周波数が高くなると、誘電分極は見られません。