誘電加熱を起こす電磁波の種類
7.無電界でも電荷が偏在する永久双極子

電波の帯域の高周波電界に誘電体を置くと、電荷が偏在している分子が電界に沿って整列し、配向分極が起こることを見てきました。ここでは、ひとつの分子の中に電荷が偏在する理由を説明しておきましょう。
たとえば、水分子(H2O)は2つの水素原子(H)と1つの酸素原子(O)が(図2-7-1)のような構造で結合しています。原子同士の結合力は、水素原子の2個の電子を酸素原子と共有することにより生じています。このような結合を共有結合といいます。このとき、2個の共有電子を引き付ける力は酸素原子の方が大きいため、電子は酸素原子側に偏ります。そのため、酸素原子側はマイナスに帯電し、逆に水素原子側はプラスに帯電します。つまり、水分子は全体としては電気的に中性ですが、酸素原子側にマイナスの極をもち、水素原子側にプラスの極をもちます。このように電界がかかっていない状態でプラスとマイナスの双極をもっている分子を永久双極子といいます。高周波電界によって誘電加熱を起こす分子の振動は、この永久双極子の構造と特徴によります。

図2-7-1/水分子の構造と電荷の偏り

水分子の構造は対象系ではなく、酸素原子側に負の電荷を帯電し、水素原子側に正に帯電しています。つまり、正と負の双極をもっています。