初心者のための高周波誘電加熱
5.交流の向きに合わせて反転する誘電分極

誘電体に電圧をかけると誘電分極します。したがって、電圧のかかった電界に誘電体を置いても誘電分極します。(図1-5-1)は直流回路上に2枚の金属板を置き、その間にできた電界に誘電体を置いて誘電分極が起きる様子を表したものです。電界は左から右に向いているため、その間に置かれた誘電体の原子(あるいは分子)のプラスを帯びた部分は右、マイナスを帯びた部分は左にして整列します。直流回路では電流の向きは常に一方向なので電界の向きも変わりません。電圧がかかっている間は、誘電体は誘電分極したままの状態(右図の状態)で安定します。

図1-5-1/直流回路上にできた電界(左図)に置いた誘電体の誘電分極(右図)

では、交流回路に誘電体を置くとどうなるでしょうか。交流回路は直流と違い、一定のサイクルで電流の向きが反転します。このサイクルの回数を周波数といいます。そして、周波数に合わせて、左右の金属板のプラスとマイナスが入れ替わり、電界の向きも同じサイクルで反転を繰り返します。そこに誘電体を置くと、(図1-5-2)のように誘電体の原子(あるいは分子)の整列方向が入れ替わり、誘電分極の方向も反転を繰り返します。つまり、交流回路に置かれた誘電体の誘電分極は交流電流の周波数に合わせて反転します。

図1-5-2/交流回路上で反転を繰り返す誘電分極の向き