初心者のための高周波誘電加熱
6.誘電体分子の激しい反転で生じる内部加熱

非常に周波数の高い電流のことを高周波電流といます。どのくらいの周波数から「高周波」と呼ぶのかは、実は決まりはありません。使われる分野によっても「高周波」の基準は異なりますが、高周波誘電加熱における「高周波」とは3MHz~300MHz(メガヘルツ)あたりを指します。周波数とは周期的な現象が1秒間に何回繰り返されるかを示す値で、Hz(ヘルツ)とはその単位です。M(メガ)は10の6乗なので、3MHz~300MHzは3×106Hz~3×108Hzとも表せます。これは、電流の向きが1秒間に300万回~3億回も反転することを意味しています。家庭にきている交流電流の周波数が50Hzないしは60Hz(1秒間に50回ないしは60回の反転)であることと比較すると、非常に周波数が高いことがわかります。そのため、高周波回路によってできる電界の向きも非常に激しく反転します。このような電界を高周波電界といいます。

周波数の低いときは誘電分極の向きの反転はスムースに繰り返されます。しかし、電界の向きが1秒間に100万回~3億回も反転する高周波電界の中では、誘電分極の向きもそれに追従しようとして、誘電体内部の分子が非常に激しく振動します。そして、この振動によって誘電体内部が発熱します。誘電体を高周波電界の中に置いて内部加熱する高周波誘電加熱とは、このような概要の加熱方法です。ただし、ここまではあくまでも概要であって、第2章以降では高周波誘電加熱の原理を電気および電磁波の理論に基づいて解説いたしましょう。

図1-6-1/高周波電界による誘電体内部の分子の反転