高周波誘電加熱の応用例
1.窯業系サイディングとは
窯業【ようぎょう】は、粘土、瓦、ガラス、セメントなど、非金属原料を高熱処理して作るものを製造する過程で、窯【かま】を使用する為に、窯業と呼ばれています。サイディングとは板状外壁材の総称となります。ここでは窯業製の羽目板・下見板を窯業系サイディングと呼びます。日本の伝統的な羽目板・下見板というのは木製でした。戦後の住宅の不燃化を図るという国の施策を受けて、木製サイディングに変わって使われるようになったのがモルタルです。昭和50年頃までは戸建て住宅の外装と言えばモルタルが主流でした。そのモルタルに変わって住宅の不燃化を実現しつつモルタルには無い良さのある外壁として現れたのが、窯業系サイディングです。現在、戸建て住宅外壁の7割以上に、この窯業系サイディングが使われています。
2.サイディングプレカット工法
窯業系サイディングの加工は、従来工事現場で行うものだというのが業界の通年でした。しかし、加工時の粉塵・騒音が周辺に与える影響は大きなものでした。また加工時に出る残材は現場の美観を損ね、処理についても問題となっていました。この問題への対応策として考案されたのが、サイディングプレカット工法です。サイディングプレカットとは、予め工場等でカットし建築現場に運び現場でカット作業無しで張り付ける工法です。本工法は近年、様々な環境問題(騒音・粉塵・廃材)に対応する技術として全国的に注目を浴びています。(日本窯業外装協会のHPより引用)
3.外壁出隅材(コーナー材)の接着加工
サイディングプレカットによりカットされた廃材は、住宅外壁の角に当たる部分であるコーナー材に使用することができます。これにより廃材が最小限となり、コストダウンに寄与しています。外壁出隅材と呼ばれるコーナー部材は、主に廃材を利用し板形状の窯業系サイディングの端面を所定の角度にカットした者同士を突き合わせて形成したものです。外壁出隅材の接着のほとんどは、加工が速く、接着精度が高い高周波誘電加熱で加工されています。以下に加工工程を示します。
4.高周波誘電加熱による加工のメリット
外壁出隅材の加工接着に利用される高周波接着機は、大きく①短尺スタンダードタイプ、②短尺高機能タイプ、③長短兼用量産タイプ、④長尺メインタイプに分類されます。使用される周波数は、主に40.68MHz、27.12MHzです。高周波出力は、短尺用で3kW~5kW、長尺用で15kW~30kWです。板材同士を正確に合わせ精度よく接着するために、水平方向の左右から側圧をかけながら上下の高周波電極により接着層を挟み込んで、選択加熱により接着剤を硬化させます。また、接着剤の使用量が少ないため、余分な接着剤のはみ出しがなく、綺麗な仕上がりとなることもメリットです。以下に高周波誘電加熱による窯業系外壁出隅材の加工メリットについて自然養生と比較します。
表1 高周波誘電加熱によるメリット
高周波誘導加熱 | 自然養生 | |
---|---|---|
接着時間 | 1分以内 | 半日~1日 |
仕上り | 糊層が1mm以内/隙間無し | 糊層が1mm以上/隙間有り |
パテ埋め | 必要なし | 必要 |
接着剤塗布量 | 自然養生の1/3 シリンダで加圧した状態で接着する為、隙間が無く少ない塗布量で可能 |
加圧しないので、材の反り・ひねりで隙間を埋める多量の塗布量が必要 |
フィニッシュ仮留め | 不必要 | 必要 フィニッシュ跡のパテ埋め、塗装補修必要 |
養生スペース | 不必要 | 必要 冬場ジェットヒーターで加温必要 |
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