高周波誘電加熱の応用例
プラスチック加熱用電極の構成例
プラスチック加熱用の電極はプレヒーター等を除いて金型が電極として使用されます。
金型は(図7-2-4)の左図のように、製品の形状に沿ってハンコのような凸形状をしており、ベタ押し金型と溶断刃付金型があります。
溶断刃付金型とは(図7-2-4)の右図のように、金型の周囲に固定の刃(刃先は尖らしていない)を取り付けてあり、高周波誘電加熱によりフィルムを溶し切るようになっています。このとき、フィルムと下定盤との間には絶縁物を挟まなければ、刃先と下定盤の絶縁距離が近づきすぎて放電現象が発生し金型を損傷させてしまいます。溶断刃の刃先は溶着金型面に対して、溶着時に完全に溶かし切るのではなく、フィルム厚が0.03~0.1mm程度残るように設定することが一般的です。溶断時にフィルムを完全に溶かしてしまうと溶断面に縮みが生じたりして美しく仕上がらないからです。溶断時にフィルム厚を0.03~0.1mm程度残し、それを引きちぎるほうが端面を美しく仕上げることができます。通常の金型は溶断刃と溶着金型面の高さを調整できるようになっており、溶断の状態を確認しながら溶断深さを設定します。
図7-2-4/高周波ウエルダーの金型と溶断刃
金型の条件としては機械加工が容易で適度な硬度を有し、平行平面度が正確で、しかも熱伝導性が良く、電気抵抗が小さくなければなりません。それらの条件を満たす材質として、黄銅(真鍮)が主に採用されています。
高周波ウエルダーは必ず絶縁紙(絶縁下敷)を用います。絶縁紙は溶着中のフィルムの電気絶縁破壊(放電現象)を防ぎ、製品と金型の損傷を防止するだけでなく、加熱されたフィルムの熱伝導による下部定盤への熱損失も防ぎます。また、絶縁紙によっては製品の離型を助け、製品の型や定盤への固着を防止するものもあります。一般的に用いられる絶縁紙は次のとおりです。
- ○テフロンシート
- 四弗化エチレン製シートで絶縁性、離型性にすぐれています。
- ○エンパイヤクロス
- ワニスを綿布に含浸させたものや紙に塗布したもの。
絶縁性、クッション性にすぐれ、もっともよく使用されています。温度が高い場合、ワニスが軟化して製品に付着することがあるので、透明のフィルムの場合は避けられます。 - ○ベークライト板
- フェノール樹脂の板。絶縁性、硬度にすぐれ、同時切断や特殊な治具による溶着の絶縁板として使用されます。
- ○マイラーフィルム
- ポリエステル樹脂のフィルム。
絶縁性、強度等はすぐれていますが、離型性に欠けます。
最近では新しい樹脂フィルムや複合材料が開発されているので、シリコン系、ポリエステル系の絶縁紙もあります。また、粘着テープの粘着材の離型紙を絶縁紙として使用している場合もあります。絶縁紙の条件は絶縁性さえあれば特に材質にこだわることはなく、製品を製作する上での条件にあわせて柔軟な選定をおこなえばいいです。
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