誘電加熱を起こす電磁波の種類
1.電磁波の作用による誘電加熱

第1章では、高周波回路上のプラスとマイナスに帯電した金属板の間に高周波電界が生じ、そこに誘電体を置くと誘電分極が激しく反転して誘電加熱が起こることを説明しました。しかし、誘電加熱が起こるのは高周波回路上だけではなく、電磁波の作用によって空間でも起こります。第2章では電磁波とは何か、電磁波によってどのように誘電加熱が起こるのかを見ていきましょう。

まず、(図2-1-1)の左図(a)をご覧ください。
電流が流れるところには、電流の進行方向に向かって右回りに必ず磁界が発生します。このとき、電流の流れが等速であれば(変化がなければ)発生した磁界も変化せず、それ以上、何も起こりません。したがって、直流電流からは磁界が発生するだけです。

図2-1-1/電磁波の発生する原理と電界

次に、(図2-1-1)の右図(b)をご覧ください。
交流電流からも同じように磁界が発生しますが、この磁界の向きや大きさは交流電流の向きや大きさに同調して絶えず変化します。そして、磁界が変化するところには必ず電界が発生します。さらに、この電界も元の磁界の変化に同調して変化するので、それがまた次の磁界を生みます。このように、交流電流から発生した磁界は電界を生み、その電界がさらに次の磁界を生むという連鎖が生まれ、空間を伝わっていきます。この現象、すなわち、電界と磁界が交互に相手を発生させ、その連鎖が波となって空間を伝わっていく現象が電磁波です。

電磁波の電界は、交流電流に同調して向きが反転します。つまり、交流回路上のプラスとマイナスに帯電した金属板の間にできた電界と同じように、電磁波の電界も一定の周波数で反転を繰り返します。当然、周波数の高い電磁波の電界は、激しく反転する高周波電界となります。したがって、電磁波の作用でも誘電加熱が起こります。