初心者のための高周波誘電加熱
もう一度、冒頭の定義に戻りましょう。
高周波誘電加熱とは誘電体を高周波電界の中に置いて内部加熱することです。
この定義で「誘電体を」と言っているのは、導電体では高周波誘電加熱による内部加熱が起こらないからです。高周波誘電加熱による内部加熱が起こるかどうかは、電流を通すか通さないかの性質の違いに原因があります。導電体に電圧をかけると自由電子が移動しますが、自由電子を持たない誘電体に電圧をかけると誘電分極という現象が起こります。この誘電分極という現象に高周波誘電加熱による内部加熱の原理が潜んでいます。
前ページで、原子は通常、陽子と電子のプラスとマイナスが打ち消し合い、原子全体で見れば電気を帯びていないと説明しました。しかし、誘電体に電圧がかかると、原子の中の電子が自由電子のようには移動しませんが、プラスの電極に引っ張られて中心からずれます。そして、原子の中で電子のずれた方がマイナスを帯び、それと反対側がプラスを帯びます。また、原子が結合したものが分子ですが、分子全体では電気を帯びていなくても、ひとつの分子の中にプラスを帯びた部分とマイナスを帯びた部分が偏在しているものがあります(第2章-7を参照)。これに電圧がかかると、プラスを帯びた部分はマイナスの電極に、マイナスを帯びた部分はプラスの電極に引っ張られます。
この現象は誘電体の内部全体で生じるため、電圧がかかっている間は(図1-3-1)のように、すべての原子あるいは分子のプラスに帯びた部分とマイナスを帯びた部分が同じ方向に整列します。これを誘電体全体で見れば、プラスの電極に近い表面がマイナスの電気を帯び、マイナスの電極に近い表面がプラスの電気を帯びます。この現象が誘電分極です。
導電体に電圧がかかった場合、そのエネルギーは電流に転嫁されますが、誘電体では電圧のエネルギーは誘電分極に転嫁します。
図1-3-1/誘電体に電圧がかかると生じる誘電分極
誘電体に電圧をかけると、すべての原子(あるいは分子)のプラス・マイナスの偏在が同一方向に整列します。その結果、誘電体全体で見れば、プラスの電極に近い表面がマイナスの電気を帯び、マイナスの電極に近い表面がプラスの電気を帯びます。
これが誘電分極という現象です。
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