マイクロ波加熱の応用例
油揚げの乾燥
即席麺に入っている乾燥油揚げは、熱湯を注いだときに湯戻りが早く(復元性が高い)、肉厚で柔らかく、日本人に好まれ大量に工業生産されています。一般的には、大豆たんぱくや丸大豆を主原料とした豆腐をフライし、着味液に浸漬させ味付けを行い、ロールを使い脱液した後、乾燥され「着味乾燥油揚げ」となります。
乾燥工程は、従来は熱風乾燥で行われてきましたが、近年は初期含水率30~50%程度から15~20%までの1次乾燥にマイクロ波加熱が使われています。マイクロ波加熱により油揚げ内部の水分が気化し急速に押し出されることで内部膨化が均一に得られ、ふっくらした肉厚の製品となり、商品価値を高めています。マイクロ波乾燥の後に70~90℃の熱風乾燥が連続的に行われ、仕上含水率10~12%まで2次乾燥されます。
図5-8は、2450MHzのマイクロ波による1次乾燥における油揚げ内部3点(中心部、長辺の端、角部)の温度履歴を示したものです。加熱開始後速やかに3点ともに100℃を超えます。特に中心部は、100℃以上が長い時間保持されており、内部圧力が高い状態をキープしながら乾燥されていることがわかります。うまくマイクロ波出力を段階的に制御することで、焦げや変色のない高品質な製品を作ることができます。油揚げは、写真5-9のようにコンベヤベルト上全面に整列された状態で連続搬送されてきます。熱風を併用したマイクロ波加熱により毎時2~3万枚という大量の油揚げを乾燥する大型装置が稼働しています。
図5-8 油揚げの内部温度履歴
写真5-9 着味油揚げ
工業用マイクロ波加熱装置が出現してから半世紀以上が過ぎました。食品加工分野での利用は、もっとも広範囲に利用されてきた分野であり、この間食品加工ユーザが要請する処理目的に対応した様々な照射方式や装置が実用化されてきました。しかしながら導波管形方式のように新たに開発された照射方式は、ユーザに知られることが少なく利用もほとんどないのが現状です。今後、これらの新しいマイクロ波照射方式が様々な食品の開発・加工技術に多く取り入れられることが期待されます。
文献
- 露木英男:食衛誌、Vol.20、No5、(1979)、p.291-298
- 林弘通:調理科学、Vol.25 NO.1 (1992)、p.66-75
- 柴田長吉郎:工業用マイクロ波応用技術、㈱電気書院、(1986)、p.56-69
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