マイクロ波応用機器
(1) アイソレータ
図11.1.1 アイソレータの外観
マイクロ波発振機で発生したマイクロ波エネルギ-は、導波管などにより照射部に伝送されるが、被加熱物が無い或いは軽負荷の場合、被加熱物にマイクロ波エネルギ-が十分吸収されずに、大部分が反射されマイクロ波発振機に戻ってくることになる。これを反射電力というが、これが大きくなると、マグネトロンのカソ-ド(陰極)を過熱してしまい、カソ-ドが高温となり破損したり、電子の放出が多くなり発振が不安定になる恐れがある。アイソレ-タは発振機と照射部の間に装着し、反射電力を吸収しマイクロ波発振機を安定に動作させるための保護機器である。
アイソレ-タは、サ-キュレ-タとダミ-ロ-ドより成っており、サ-キュレ-タはマイクロ波発振機からの入射電力と照射部からの反射電力とを、導波管T字部に設けられているフェライトと磁界の作用により分離して(「右ネジの法則」…入射・反射波の磁界方向が180°異なることを利用)、入射電力は殆ど損失無しに照射部へ電送し、反射電力をダミ-ロ-ド側へ分離・導入するものである。反射電力はダミーロ-ドの水(大電力用)或いはサンドロード(電波吸収用焼結体。1.5kWクラスの小電力用)に吸収され、熱となって廃棄される。図11.1.1 は空冷式アイソレ-タの外観を示している。本図ではダミーロードが空冷式なので冷却ファンで冷却するようになっている。大電力用はサーキュレータ、ダミーロードとも水冷式であり、性能を確保する観点からは導波管内部に設けられているフェライトを如何に冷却するかが鍵となる。これはアイソレータの性能は、フェライトの温度に依存することが大きいからである。
(2) パワ-モニタ
図11.2.1 パワーモニタの外観
マイクロ波発振機より照射部に伝送されるマイクロ波エネルギ-(入射電力)と、照射部から反射されてくる電力(反射電力)を分離・検出し表示するもので、接続導波管の一部に挿入するものである。
パワ-モニタは、方向性結合器、同軸無反射終端器、クリスタルマウント(ダイオード)、指示計(電流計)、同軸ケーブルなどより成っている。測定精度(確度)は、方向性結合器の信号検出部、無反射終端器、クリスタルマウント(ダイオード)などの製作精度及び各構成機器のVSWR特性、校正作業時の誤差発生などに左右される他、使用環境の温度によってもダイオードの検波特性が変化するため、総合精度はそれほど高くなく、測定機器としてではなく、その名が表わす通りにモニター程度の位置付けとして考えた方が良い。
尚、精度をより向上させたい場合は、価格的には1桁以上高いもののクリスタルマウントをパワ-センサに、指示計をパワ-メ-タに、同軸無反射終端器のVSWRが1.05以下のものに置き換えることにより測定精度はかなりアップする。
図11.2.1にパワ-モニタの外観を示している。指示計及び検出部が1式なので入射電力と反射電力を同時に測定することは出来ない。ここで図11.2.1の接続状態で入射電力を測定するとした場合、クリスタルマウントと同軸無反射終端器を入れ替えて接続することにより反射電力を読み取ることが可能である。
方向性結合器の検出部を導波管の両側の幅広面に設け、それぞれにクリスタルマウント、同軸無反射終端器、指示計を接続することにより入射電力と反射電力を同時に読み取ることも可能である。
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