マイクロ波管
マイクロ波管とは、マイクロ波帯(0.3~300GHz)の電磁波(電波)を発生させる電子管で、直流電子エネルギーをマイクロ波エネルギー(電力)に変換するものである。世の中にはマグネトロン、クライストロン、ジャイロトロン、進行波管(TWT)と称されるものがある。何れのマイクロ波管も陰極(カソード)から陽極(アノード)へ流れる直流電子ビームを有しているが、この電子ビームの流れを電界及び磁界を利用しどのような運動をさせるかで管種は分類される。電子の流れは回転運動、直進加・減速運動、螺旋運動などがあり、ここでは専門的になるため、マイクロ波加熱に良く利用されるマグネトロンの発振原理を基本に、稀に利用されるクライストロンについては簡単に説明する。他のマイクロ波管については、その仕様、特徴、平均寿命、用途などを表8.1.1 に、それらの代表的外観を図8.1.1 示している。クライストロンやジャイロトロンは得られる出力電力は桁違いに大きく、その大きさもモデルとの比較で理解いただけると思う。
電子ビーム 制御方法 |
大分類 | 小分類 | 出力 (kW) |
周波数 (GHz) |
パルス幅 (ms) |
平均寿命 | 用途 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
直線ビーム管 | クライストロン | CW(連続波) クライストロン |
10~1300 | 0.35~35 | ─ | 数万時間 | UHF TV、各種通信、 粒子加速、誘電加熱など |
5万時間 (MT) |
|||||||
パルス クライストロン |
1~100MW | 0.32~35 | ~1.5 | 数万時間 | 船舶・航空・気象用レーダー、 粒子加速、誘電加熱など |
||
進行波管 | ─ | 1W~400 | 0.4~45 | ─ | 7万時間 (MT) |
衛星通信、宇宙通信、 マイクロ波回線など |
|
ジャイロトロン | ─ | 0.6~1000 | 8~250 | ─ | ─ | 誘電加熱、プラズマなど | |
フロスフィールド デバイス |
マグネトロン | CW(連続波) マグネトロン |
0.4~100 | 0.9~2.45 | ─ | 数千時間 | 誘電加熱(電子レンジ、 工業加熱、プラズマ)など |
パルス マグネトロン |
1~5000 | 1~17 | ~0.01 | 数千時間 | 船舶・航空・気象用レーダー、 粒子加速など |
*直線ビーム管:電子がほぼ直線状(ビーム)に走行する管。
*クロスフィールドデバイス:電子が旋回運動しながら走行する管。
*(MT):カソード(陰極)をメタライジング処理(寿命の延命処理)実施。
*寿命は、機器の構成、負荷条件により変化するので、あくまでも目安である。
表8.1.1 マイクロ波管の種類
図8.1.1 各種マイクロ波管の外観と概略仕様
クライストロン、ジャイロトロン、進行波管などは民生用としては拡販できることは殆ど無く、主な得意は公的な研究機関となる。例えば、クライストロンであれば「高エネルギー加速器研究機構(KEK)」、「日本原子力研究開発機構」(2005-10;日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構とが統合し発足)、高輝度光科学研究センター(SPring8。兵庫県西播磨)や通信衛星用などと言われている。
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