高周波誘電加熱の応用例
フレキシブルコンテナバッグの溶着加工

フレキシブルコンテナバッグとは

フレキシブルコンテナバッグは、粉粒体を大量輸送することを目的に、折り畳みができる柔軟性の材料を用いて袋状に造られ、吊り上げるための吊り部と、注入・排出ができる開口部を備えたコンテナ(充填重量が0.5~3トン)で、工業薬品、合成樹脂、窯業土石品、飼料、食品など300種類もの輸送に利用されています。最近では、上記以外に除染用バッグとしても使用されています。

大別すると、長期間繰り返して使用することを目的として造られたランニング用と、1回から数回の使用を目的として造られたクロス用があります。また、ランニング用でポリエチレン織布のものをJ型2種(セミランニングタイプ)樹脂加工布、ゴム引布をJ型1種(ランニングタイプ)と言います。

一方、フレキシブルコンテナの歴史は、粉粒体の輸送容器として戦前に開発され、昭和30年代に本格的に使用されるようになりました。昭和40年代に入ると、物流の近代化が社会的、経済的な要請となる中で、包装、輸送、保管の各流通部門における合理化・省力化を実現し、トータル輸送システムによる流通コスト低減を可能にしたフレキシブルコンテナの登場は、産業界に新しい物流システムとして迎えられ、今日に至っております。


[フレキシブルコンテナバッグ(ランニングタイプ)の構造と加工部位]

左の図は、フレコンバッグ各部名称を示したものです。
基本的には、充填物を本体内に入れるための注入口、充填物を貯めるための本体、輸送後に排出するための排出口があり、注入・排出口を縛るための縛り紐、格納するための上下蓋、充填・排出時にバッグを吊り下げ固定するためのラップなどで構成されています。本体形状は、図のような丸型の他に角型があり、角型には形状を安定させるため、本体内部の角部に隔壁、また、本体外部の角部にはコーナーラップ等のパーツがついています。加工布は、樹脂の織布をPVC、EVAシートで挟み込んだ構造で、気密性・防水性等に優れています。

バッグの構成で、ラップについている吊り用の平ベルトや縛り紐、マジックテープなどはミシン縫製、また一部ではホットシーラーと呼ばれる熱風式の溶着装置で加工されていますが、本体の筒状加工、上面・下面と本体の加工、注入・排出口の加工、上下蓋の取り付け、ラップ加工やその他製作工程で、ほとんどの加工は高周波ウェルダーによる溶着加工が施され、バッグの強度や品質が保たれていますので、ウェルダー依存度の高い製品と言えます。 溶着は大別すると丸型で7種類、角型で13種類の機械で加工されております。

以下、代表的な機械と加工部位について紹介します。

①胴付け、ラップ、角袋隔壁付け用高周波ウェルダー


上下電極盤サイズ:2100mm×300mm
加圧力:7tonf
加圧源:油圧
スライドテーブル送り:ボールねじ及びブレーキ付きモータ
高周波出力:35kW

フレコンバッグ本体布の端面を合わせて筒状にする胴付け加工、本体布に吊りロープ取り付けのためのラップ加工、また、角袋加工において、各形状を保たせるための隔壁付け加工を行う高周波ウェルダーです。構成は、35kW~40kWの高周波発振器1台に対して、プレスヘッド2台、更に1プレスあたり2面のスライドテーブルを有する2頭4面スライド式の機械です。
スライドテーブルは、胴体部の抜き差しができるように片持ち(C型)構造になっています。>スライドテーブルは、胴体部の抜き差しができるように片持ち(C型)構造になっています。また、それぞれのスライドテーブル個々に高周波条件設定ができるように、4面の操作盤があります。

②注排口、蓋押さえ、ハカマ付け用高周波ウェルダー

フレコンバッグ上下面の注排口、蓋押さえ、ハカマ付けなどを行う高周波ウェルダーです。構成は、35kWの高周波発振器1台に対して、プレスヘッド2台、更に1プレスあたり2面のスライドテーブルを有する2頭4面スライド式の機械です。スライドテーブルでは、平面上の上下面に対して筒状の注排口、ハカマの溶着加工を行いますので、材料セットしやすくするために円盤状の回転テーブルを設けているところが特徴です。また、作業の動線を考慮してスライドテーブルは対面ではなく90°に配置されています。

上下電極盤サイズ:960mm×960mm
スライドテーブル:1200mm×1300mm
回転円盤径:1140φ
加圧力:6tonf
加圧源:油圧
スライドテーブル送り:リンクモーション送り
高周波出力:35kW

③本体・上下面接合用高周波ウェルダー


上部ホルダーサイズ:300~400mm(直線)
下部電極サイズ:300~400mm×150mm(90°手動回転式)取替可能
加圧力:1tonf
加圧源:エアハイドロ(低油圧)式
高周波出力:10kW

①,②の機械で、本体加工・上下面加工されたものを接合してフレコンバッグを完成させる高周波ウェルダーです。構成は、10kW発振器1台に対して、2基のプレスを背向させた機械です。プレスはC型形状で、プレスの下梁は注排口が抜き差しできるように外径約180mmの筒上になっており、更に下部電極は注排口を抜き差ししやすくするために回転できるようになっています。また、接合部分の生地ずれ防止など細心の注意が必要であり、電極近くまで手を持っていくこともありますので、プレスで指詰めなどの事故防止のため安全加圧機構を設けて安全対策されています。